★人を赦すということ★

 ふと思い出した記憶


★人を赦すということ★


トラック事故に巻き込まれた俺の婆ちゃん。


即死だった。


『こーくん、頑張りなさいよ』


明るく電話で話した後、いきなりやってきた突然の別れ。



……


葬式でね。


その運転手さんと家族が謝罪に来てたんだけど、運転手さんはとても真面目そうな人だった。


【ここまでの人生、きっと真っ直ぐ歩いてきたんだろうな】


顔を見れば何となく分かった。


それが、たった一つの出来事で転落する。


その人の奥さん、そしてお母さんも取り乱したように泣いていた。


『許されるとは思っていませんが』


『主人が』


『息子が』


『本当に本当に、申し訳ありませんでした』


運転手さん


そして奥さん、お母さん


膝を崩し泣いていた。



……


俺は会うまで、婆ちゃんの命を奪ったその相手が憎かったけど


鼻水を垂らしながら頭を下げ続ける運転手さん


そして、その奥さんやお母さんを前に責める気力を失った。


例えば、俺が交通事故で誰かを殺めたとして


俺の奥さんや俺のオカンが、被害者遺族の前で泣いて謝っている姿を想像してしまった。


罪は罪。


でも咎めたところで婆ちゃんは返ってこない。


『線香あげてください』



……


その中で唯一、俺のオカンだけは違った。


初めてあんな鬼のようなオカンを見た。


恐怖すらも覚えた。


『人殺し!!』


『帰ってくれ!!』


非情にも、その運転手さんを睨みつけ叫び泣いていた。



……


オカンにとっては、じいちゃんが死んでたった一人の肉親だったから無理もない。


オカンは一人娘。


婆ちゃんとオカンは切っても切れない強い絆で結ばれていた。


その絆を相手の不注意によって一瞬で絶たれたのだから責めるなと言うほうが無理かもしれない。



……


親父と俺はオカンをなだめ


運転手さん、そしてその家族に線香をあげて貰った。


肩を叩く俺の横で


『絶対に許さない』


オカンは怒りと悲しみに震えていた。



……


その出来事から数年。


オカンが


運転手さんを【赦】した。



……


婆ちゃんの交通事故現場に


その運転手さんは花を絶やすことなく


ずっと


供えに来た。


雨の日も


風の日も


枯らすことなく


ずっと


供えに来た。


詫びて


詫びて


詫びたのだろう。


花を絶やすことなく


雨の日も


風の日も


ずっと


枯らすことなく


供えに来た。



……


その運転手さんの婆ちゃんに対する懺悔の想いが、オカンの心に多少なりとも届いたのだと思う。


『私ね』


『もうそろそろ赦そうと思うんだ』


オカンは小さく呟いた。



……


友人


恋人


そのどれと比較しても


やはり母とは偉大。


世界中のすべての人達が敵になろうとも


きっと母だけは味方に残る。


その母を断たれた母と


それを【赦す】母を見た俺。



……


オカンはね、37歳のこの俺に


『あんたご飯は食べれよるの?』


『身体は大丈夫なの?』


しょっちゅうラインを送ってくる


『あのな』


『俺のことは放っておけよ』


たまにウザイが、それでもきっと有難いことなんだよね。


こーして【当たり前に】連絡とれるってこと。


だからたまには返事返してあげようと思う、心優しき俺でした(^_-)笑

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