心の巡礼

#走る遍路

忘れない記憶

第77番札所道隆寺へ向かふ途中で
民家の窓から
身を乗り出して僕に声をかける人がいる。

お遍路さん!

お遍路さん!

ちょとまってください!

突然の呼びかけに驚きながら振り向くと

慌てて玄関から高齢の男性が
駆けてきた。
足下を見ると
スリッパのままである。

僕は何事かと思案しながら

男性の言葉を待つことにした。

お遍路さん!息子が
造りましたお地蔵様を受け取ってください。

間もなくゆっくりとその息子さんが現れた。
すぐに
息子さんの様子がおかしいことに気がついた。

僕は
息子さんにありがとうございます!
と感謝を述べたが

下を向いたまま反応がない。

お父さんにも
かわいい小さなお地蔵さんを頂き
深く感謝を伝えた。

お父さんは
まんべんの笑顔で
僕を迎えてくれた。

お遍路さんのために
息子さんが
お地蔵さんを自宅で造っていること。

息子さんの生き甲斐として
お遍路さんに
お地蔵さんをプレゼントしていること。

息子さんの障害に関すること等々。

僕はようやく事情が理解出来てきた。

お父さんと息子さんとの別れ際に
深く一礼して
ありがとうございますと心より感謝した。

驚きの笑顔中に

深い祈りと
語り尽くさない苦労
を内在しているのだ。

僕も命ある限り
生かされていることを知る。

捧げられた祈りと心使いに
目頭が熱くなる。

お遍路さんだけの巡礼ではない

お父さんと息子さん二人も
同じように心の巡礼しているのだ。

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