日本は世界一の対外純資産国であるにもかかわらず、なぜ30年以上も不景気で賃金もほとんど上昇しないのでしょう?
日本は世界一の対外純資産国であるにもかかわらず、なぜ30年以上も不景気で賃金もほとんど上昇しないのでしょう?もちろんよく言われる緊縮財政や消費税増税も原因ですが、それ以前に日本が、プラザ合意後に戦略を変えなかった事に大きな原因があります。以下プラザ合意に至るまでとその後の説明です。かなりの長文になります。
日本は敗戦後、焼野原の中戦後復興や賠償金の為に、基軸通貨である米ドルを稼がなければなりませんでしたが、戦争特需などもあり、順調に、繊維、自動車、電化製品、半導体などの輸出で黒字を稼いできました。
ドルが足りない時代はそのかいあって、米ドルを順調に増やし著しく成長していきました。 そこまでは良かったのですが、金本位制の廃止(ニクソンショック)による金兌換制の廃止、さらに為替を固定から変動相場制へと移行させました。 これは日本ドイツなど貿易強国にとって痛手になるはずでした。しかしそれでも日本の勢いは止まらず、米国との間に軋轢を生む事になります。
そして、繊維、家電、自動車、半導体、これらをアメリカの圧力のまま言いなりになりましたが、それでも日本の勢いは止まりませんでした。
そして、80年代からは経常収支黒字は膨大になり、ドルを貯め込むになります。この 「一方的に日本が黒字を稼ぐ」という事は、その一方でアメリカだけでなく世界中にたくさんの赤字国を作るわけであり、持続可能ではないのですが、「日本は敗戦した資源もない貧乏国」という先入観に囚われた日本人はそこまで考えが至らなかったのです。
そこで日本がそれに気づけばよかったのですが、日本人は相変わらず逆風に逆らい続けました。 その為、業を煮やしたアメリカを中心に世界から「プラザ合意」というその黒字の是正への警告を与えられます。
この1985年のプラザ合意以降、2倍以上の円高になりました。この意味は、日本人の給料が国際的に倍以上高くなったということです。よって今迄と同じ給料、コストで製造すれば輸出価格は倍以上になります。例えば、1ドル=240円なら240万円の車は1万ドルですが、1ドル=100円になれば2万4000ドルという高価な車になってしまいます。
よって「今までより売れなくなり輸出で儲けるのは難くなるので、日本の黒字は減ってアメリカの赤字も減るだろう」というのがプラザ合意の意図するものだったわけです。
しかし、その意図に反し、その後も日本は黒字を稼ぎ続け、30年以上連続世界一の対外純資産国であり続けたのです。それが出来たのは何故でしょう?
それは「コストカット」です。
1万ドルの車があったとして、今まで通りの価格で売るなら、1万ドル=240万円でつくっていたものを1万ドル=100万円でつくらなければ売れません。今までと同じ輸出価格を保つためにはコストを半分以下にするしかないのです。しかし、コストの大半は人件費ですから、そうそう簡単なものではなかったのです。それでもやるというならコストカットの嵐になるのは明らかでした。
本来ならここで、いいかげんに戦後復興時の輸出主導型の経済から内需拡大型の経済政策へと国家レベルで方針転換すべきでした。しかし、そこで政治家が思考停止したか、財務省(旧大蔵省)や経団連などの方針かはわかりませんが、そのまま続けてしまったのです。
今まで通り安く海外に売り続けるために、無理矢理、自分達の給料を削って、サービス残業を奨励したり、日本人の労働への美徳の精神も手伝ってか、倍以上タダ働き同然のことをしてしまったのです。そして、いつのまにか今のような人の労働に対して対価を払わない社会になっていったのです。
加えて、日本がしたのは対外直接投資です。アメリカなどの対日貿易赤字国へ現地に直接投資をして生産をすればドルが流出する事はありません。更に現地では雇用を生み出し、周辺産業を活性化させ、日本の世界最高峰の技術流出まで起こるのですから相手国にとっては笑いが止まらないわけです。
では、これが日本国内にメリットがあったのかと言うと、それは疑問です。国内の並み居る優良企業が国際競争力を保つためにコストカットし人件費を増やさず、さらに協力企業には値下げ圧力をかけるという愚策を、輸出量を自主的に制限してからも続けてしまったのです。
そして、ここまでの犠牲の上に稼ぎ続けたのは円ではなくドルなど外貨ですから、この3兆ドル以上の黒字は、海外に投資され、日本国内で受け取れていないのです。日本国内で日本国民がこの30年以上、それこそ自分達の身を削り安月給で働いた分は、(全てとは言いませんが)海外の人達が使っているか、また500兆円を超えるという大手企業の内部留保になってるわけですね。
これでは、日本国内のデフレ不景気が終わる訳がありませんし、日本国内の給料が上がるわけはありません。
そして今は原油高も重なり、物価が上昇するのもかかわらず賃金が上がらないスタグフレーションにまでなってしまいました。
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